まめさく書店へようこそ。
まめさく書店では、僕こと、しょぼいサラリーマンの豆作(マメサク)が読んだ本をただ紹介する自己満足型のブログ書店です。
コーヒーが好き。もっとコーヒーのことを知りたい。
だから、コーヒーの本を本屋さんで探してみたけれど・・・。
どれもコーヒーの淹れかたやコーヒー豆の栽培地、いろんな喫茶店のこだわりなんかをお洒落な写真と共に紹介した本ばっかり・・・内容がちょっと浅い・・・。
そんなお洒落なだけの本はいらない!!
もっと、深くコーヒーのことが知りたいんだ!!
そんな、あなたを満足させることができるおすすめの本を2冊紹介します。
1冊目:コーヒーが廻り世界史が廻る
2冊目:コーヒーの科学
この2冊を読めば、ちょっとしたコーヒー博士になった気分になれますよ。
世の中にはコーヒーが好きな人はたくさんいますが、コーヒーのことを知っている人はそんなにいません。
ですからこの2冊を読んで、ふとした時にコーヒーについてちょっぴり語れるくらいになるのも面白いですよ。
周りの人からは、
おぉ〜!!なんか、カッコいい・・・
って思われるかも。笑
それでは、少しこの2冊について紹介していきます。
コーヒーが廻り世界史が廻る
まずは、『コーヒーが廻り世界史が廻る』です。
この本は、コーヒーの起源から始まってコーヒー目線で世界史を味わうことができる本です。
それでは、本書第一章よりコーヒーの起源について少し紹介します。
よく知られているコーヒーの起源伝説に、アラビアの山羊飼いカルディの物語というものがあります。
カルディが、ある時、山羊を新しい牧草地に連れて行くと、山羊が興奮して、夜になってもいっこうに寝つこうとしない。困ったカルディは近くの修道院に相談に出掛ける。修道院長のスキアドリが調べてみると、山羊がある灌木の実を食べているのが分かった。彼はその実をいろいろ試しているうちに、ある時、ゆでて飲んでみた。するとその夜、寝入ることができずに、あることを思いつく。修道院では夜の礼拝を行なっていたが、修道僧の中には居眠りする者もいる。そこで修道院長はその飲み物を彼らに飲ませたのである。効果は絶大、その後、彼らは夜の礼拝の度ごとにその黒い飲み物を飲むようになった。
『コーヒーが廻り世界史が廻る 近代市民社会の黒い血液』P.5
この山羊飼いカルディの話は17世紀にイタリア人が書いた話だそうで、山羊飼いのような牧歌的な話はコーヒー起源のイスラム圏というよりはヨーロッパ的であるとのこと。
ショッピングモールなどでよく見かけるコーヒーと輸入食品の店 KALDI はここからきてるのですね!!
このような話は他にもたくさんあって、コーヒーの起源伝説は今のところ明快ではないようです。
いずれにせよ、コーヒー起源伝説は15世紀ごろのイスラムの僧侶の話であり、イスラム神秘主義のスーフィーと呼ばれる僧侶たちがコーヒーを飲んでいたということは確かなようです。
今とは違って嗜好品として飲んでいたのではなくて、どちらかというと礼拝のために覚醒を目的に飲んでいたようです。
そんなイスラムの聖書コーランにはたくさんの禁忌があります。
その中には、「炭は食してはいけない」というものがあります。
当時のイスラム教内ではコーヒーは「炭」ではないか、という議論が起こりました。
しかし、コーヒーはすでに僧侶の間で飲まれており、なくてはならないものにまでその地位を高めていました。
ですから、「炭派」と「非炭派」の戦いが起きます。
イスラム教内での激しい議論の末、コーヒーは「炭」ほど強くは焼かれていないという解釈によってコーヒーは「炭ではない」と決着がつきました。
このことはコーヒーが日の目を見る歴史的な出来事です。
もし、このときコーヒーは「炭である」との結論に至っていれば、もしかしたら、この世にコーヒーが存在しなかったかもしれないのですから。
さあ、ここからコーヒーの歴史が始まります!
本書は第一章から第八章で構成されていて、コーヒーの流通・生産・消費・文化などを通して、以下のような誰もが聞いたことのあるキーワードとの関わりを見ていきます。
オスマン・トルコ帝国、オランダ商人、ロンドンのコーヒーハウス、ルイ14世、ナポレオン、プランテーション、近代戦争、第二次世界大戦・・・
続きは、ぜひ、本書を読んでみてください。
さて、本書の簡単な紹介の最後に私が面白いなと思った感想を少し書きたいと思います。
私は、「第七章:現代国家とコーヒー」で紹介されているブラジルのコーヒー政策にとても人間の欲深さを感じました。
20世紀初頭の10年間、ブラジルは世界のコーヒー総生産の四分の三以上を生産していました。
ブラジルは外貨獲得のために大量にコーヒーの木を植え、世界的なコーヒー需要から利益を得るための政策です。
その結果、ブラジル国民の90%がコーヒー産業に関わっており、外貨収入の90%をコーヒー生産で獲得していました。
そんな中、第一次世界大戦が勃発し、ブラジルはコーヒー消費国への輸出ができなくなってしまいます。
すると、当然のことですが、大量のコーヒーを換金することができずに在庫として抱えることになります。
コーヒーがブラジルの稼ぎ頭でしたので、たちまち財政難に陥りました。
ところが、この時は天災によるコーヒーの不作とアメリカのコーヒーブームによって大量の在庫が大きな利益に変わりました。
このことはブラジルにとっては、まさに奇跡的な出来事でした。
その一方、コーヒー政策に大きく頼ることは投機に近いということも明らかになった出来事でした。
このとき、ブラジルはコーヒー政策からの転換をすべきだったのでしょうが、そのままコーヒー政策を突き進みました。
ブラジルとしては第一次世界大戦が終われば、また大量のコーヒーが消費されると見込んでのことでした。
そして、戦争が終わりました。が、世界は戦争で疲弊していて、以前のようにコーヒーを消費できませんでした。
ブラジルの読みは外れたのでした。
その結果、ブラジルは国家をあげて利益を狙ったコーヒーを処分する必要に迫られたのです。
その処分方法の一つに、コーヒー豆を燃料に蒸気機関車を走らせるというものがありました。
スーフィーたちが勝ち取ったコーヒーは「炭ではない」という地位を、現代の我々がコーヒーは「炭である」と証明した格好となりました。
これはとても面白い帰結ですね。
本書を読んで、コーヒーは世界史とは切っても切れない関係であり、今も昔も資本主義社会を体現している代表格なのだと痛感しました。
歴史を知ると、よりコーヒーが味わい深いものになります!!
コーヒーの科学
さて、次に紹介する本は『コーヒーの科学』です。
本書がどんな本なのかを分かりやすく言い表すと、「テレビゲームの攻略本のようなもの」だと言えます。
テレビゲームはそれだけでも楽しくプレイすることができますよね。
しかし、攻略本や攻略サイトを読めば、より深くそのテレビゲームを楽しむことができますよね。
これと同じで、コーヒーの知識なんてなくてもコーヒーは美味しく飲めますが、本書を読めばコーヒーをもっと深く味わえるというわけです。
じゃあ、どんなことが書かれているのか、それがわかるように目次を紹介します。
目次の量が多くてビックリですが、それだけコーヒーについて網羅的なのだと伝わればいいなと思います!
- コーヒーってなんだろう?
- 科学を知ればコーヒーが変わる!
- コーヒーができるまで
- 果実とコーヒー豆の構造
- コーヒーの加工工程
- コーヒーノキとコーヒー豆
- アカネ科ってどんな植物?
- コーヒーノキの起源
- コーヒーノキ属の代表種
- 種と品種
- アラビカ種は変わり種
- アラビカ種の生い立ち
- コーヒーノキは「日陰者」?
- コーヒー豆は「豆」じゃない
- 生豆を植えると芽が出るの?
- コーヒーの葉と新芽
- なぜコーヒーノキはカフェインを作るのか
- 節が大切
- コーヒーの花が咲く頃
- 受粉と受精
- 果実と豆の生長
- 主な栽培品種とその分類
- コーヒーの歴史
- 「コーヒー」以前の利用法
- コーヒーの発明
- 栽培と生産技術の歴史
- 焙煎の歴史
- 抽出技術の歴史
- その他の関連技術の歴史
- コーヒーの「おいしさ」
- 「おいしさ」を科学する
- 「コーヒーのおいしさ」の主役たち
- ところ変われば「味ことば」も変わる
- 「おいしい苦味」という矛盾
- コーヒーの味の謎に迫る
- 唾液の重要性
- 味物質の口腔内ダイナミクス(分子動態)
- 分子の挙動が生み出すおいしさ:口当たりとキレ
- コーヒーのコク
- 酸味と酸っぱさの違い
- 香りとおいしさ
- 前門の香り、後門の味
- 薬理的なおいしさ
- 「おいしいコーヒー」と「よいコーヒー」
- おいしさを生み出すコーヒーの成分
- カフェインは苦味の1〜3割
- 苦味の主役を探せ
- 脇を固める多彩な苦味成分たち
- コーヒーの酸味はフルーツの酸味
- コーヒーの香りは1000種類?
- いちばんコーヒーらしい香りの成分
- Sを探せ
- もう一つの焙煎香とポテト臭問題
- 一癖ある名脇役
- スモーキーな深煎りの香り
- コーヒーの甘さ?
- レモンの香りのするコーヒー
- ケニアに潜むカシスの香り
- 「モカの香り」の謎に迫る
- 世界から漂いはじめたモカの香り
- コーヒーは発酵食品
- 発酵をコントロールする
- 焙煎の科学
- 家庭焙煎してみよう
- 焙煎開始
- 8段階の焙煎度
- 加熱の仕組みと温度の変化
- 見た目と構造の物理的変化
- 成分の化学変化
- 焙煎後の経時劣化
- 焙煎豆の保存法
- プロの焙煎と焙煎機
- いろいろな焙煎
- 日本の職人の底力
- 科学者たちの盲点
- 豆のばらつきを把握する
- コーヒーの抽出
- 直前に挽けばおいしさアップ
- 浸漬抽出と透過抽出
- ドリップ式はクロマトグラフィー
- 抽出の「やめどき」が重要
- 温度の基本は「浅高深低」
- 挽き具合も肝心
- 泡がコーヒーをおいしく変える
- 濾過の過程
- 抽出法各論
- コーヒーと健康
- 健康を考えるとき大事なこと
- 信頼できる情報ってなんだろう?
- コーヒーの急性作用
- 長期影響を考える
- 相関と因果関係
- 介入試験の難しさ
- コーヒーの長期影響
- 善悪どちらが大きいか?
- コーヒーを飲むと長生きできる?
- アピールは割りに合わない
- 飲みすぎるとどうなるか
- 飲み過ぎと適量の境界線
- 一般成人の「適量」の目安
- 摂取に注意が必要な人
どうです?とても内容が多いでしょう?
多いですけど、各項目は2〜4ページ程度にまとめられていますので、とても読みやすいです!
第4章〜第7章なんかは、コーヒーがコーヒーたらしめている核心部分になり、他のコーヒー本ではなかなか出会えない内容です。
ちょっと理系的な内容が多いところではありますが、「へぇ〜」くらいで読み進めても知識を楽しく理解できます。
ここで、「第7章の7.泡がコーヒーをおいしく変える」から少しコーヒーの泡の話を紹介します。
「起泡分離」という現象を知っていますか?
この「起泡分離」を簡単に説明すると、泡が液中の特定の成分を吸着する現象のことを言います。
この「起泡分離」がコーヒーのドリップ中に発生する泡でも発生しており、コーヒーでいうところの不味い成分を吸着しています。
本書に「ドリップ中に発生した泡の味見をしてみたら不味さがわかる」とありましたので、実際に僕も味見してみました。
渋みが強くて、本当に不味かったです。
本書にも書かれていることですが、逆にこの泡が不味い成分を吸着してくれているからこそ美味しいコーヒーが飲めるということですね。
おいしいコーヒーを淹れるためには、ドリップの際にコーヒーの泡を抽出中のコーヒー内に落とさないように注意しなければならないとよく聞きますが、このことが理由だったというわけです。
このように、本書はコーヒーを科学的に分析しているとても面白い本なのです。
本書を読んで、さらにコーヒーの深みにハマるのも楽しいですよ。
まとめると
いかがだったでしょうか。
この2冊を読めば、あなたも下記のようになります。
- コーヒーを歴史を通して味わえるようになる
- コーヒーを科学的に見ながら味わえるようになる
コーヒーのことをもっと知りたいと思っていた人は、この2冊を読み終えたとき、きっと今までよりもコーヒーがおいしく感じるに違いありません。
僕は、愛用のコーヒーアイテムの仲間としてこの2冊を大切に使っています。
それでは、これからも楽しいコーヒーライフを!!
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。