まめさく書店へようこそ。
まめさく書店では、僕こと、しょぼいサラリーマンの豆作(マメサク)が読んだ本をただ紹介する自己満足型のブログ書店です。
今回は、ドーキンス博士が教える「世界の秘密」について書きたいと思います
この本に出会って、僕は本当の意味で「本って面白い」ということを知りました。
もちろん、この本を読む前にも本は読んでいましたけど、どちらかというと本を読む姿勢が「本は読まなければならないもの」というような、動機が「変な」読み方をしていました。
ですから、ちょっと大袈裟に言うと「本を読むこと=苦痛」でもありました。
そんな時、何気なく新聞を読んでいると、数種類の本を紹介している記事があり、そこでこの本を見つけました。
別に新聞に書かれたこの本の紹介文が特別良かったと言うわけではないのですが、なぜか、とてもこの本が気になり、すぐに購入しました。
そして、読んでみて「あ〜、何この本。もっと若い時に読みたかったなぁ」って思いました。
僕は、大して頭は良くないくせに科学の本が好きでして、大人になってからそういう本をけっこう読んでいます(あまり理解できていないので自己満足です)。
そして、もっと勉強しておけばよかったなぁっていつも思っています。
ですから、もっと若い時に、それこそ中高生くらいの時に、この本に出会っていたら、もしかすると、もしかすると、もっと違った人生になっていたかもしれないなぁと思っています。
僕くはこの本のことを、人生を変えてしまうかもしれない本だと思っています。
ドーキンス博士が教える「世界の秘密」ってどんな本?
著者のリチャード・ドーキンスさんは進化生物学者として世界的に有名な方で、「利己的な遺伝子」や「盲目の時計職人」などの有名な著書がたくさんあります。
そして、そのどれもが難しい本です。
僕は「利己的な遺伝子」しか読んだことはありませんが、本当に難しいです。
ほぼ、理解できていません(また、挑戦してみようと思います)。
でも、この【ドーキンス博士が教える「世界の秘密」】は、そんなリチャード・ドーキンス博士が子供達に科学に興味をもってもらうように工夫を凝らしたとても分かりやすい構成になっています。
と言っても、科学に興味のない子供にしてみれば難しすぎる内容であるとは思いますが・・・。
本書の構成は、
- 何が現実で、何がマジックなのか?
- 最初の人間は誰だったのだろう?
- なぜ、こんなにもいろんな動物がいるのだろう?
- ものは何でできているのだろう?
- なぜ夜と昼があり、冬と夏があるのだろう?
- 太陽ってなんだろう?
- 虹ってなんだろう?
- すべてはいつ、どうやって始まったのだろう?
- いるのは私たちだけなのか?
- 地震とは何だろう?
- なぜ悪いことは起こるのだろう?
- 奇跡とは何だろう?
このように 12 のテーマで構成されています。
そして、そのテーマのひとつひとつが昔の人にとっては未知の現象であり、昔の人がその現象をどのように捉えていたか(未知なものは神話として捉えられていた)の紹介から始まって、それを今は科学を持ってして理解していることを解き明かしていきます。
しっかりと科学的な説明がされていますので読み応え抜群です。
さらに、本書にはとても美しい挿絵が描かれており、ドーキンス博士の文章にグッと興味を惹きつける魅力があります。
ドーキンス博士が教える「世界の秘密」− P.118より抜粋
もはや、科学本の芸術作品です。
ちょっとだけ内容を
どの章もとても面白いのですが、特に僕が面白いなと思った、11章の「なぜ悪いことは起こるのだろう?」についてちょっと紹介します。
「マーマレードを塗ったトーストがテーブルから落ちると大抵マーマレード側が床になる」や、「コイントスで裏が出るように強く願えば願うほど表が出る」などのような悪いことは、原因と確率の話で起こるのであって悪いことが起きているとは言わない。
マーマレードを塗ったトーストは、落ちる時はテーブルの高さから回転して落ちるが、高さの問題で大抵そうなるという原因が存在する。
コイントスに至っては、完全に五分と五分。
そう思うから、起こったことを悪いことが起きたと捉えているに過ぎない。
じゃあ、悪いことが起きるというのは思い込みか?というとそれは違う。
自然淘汰が作用する範疇では、悪いことは起こる。
例えばウサギなどの被捕食者はキツネなどの捕食者に狙われているので、ウサギにとっては悪いことが起きてしまう。
狙われているので、悪いことが起きる確率が高いというわけだ。
悪いことが起きる確率を下げるために、ウサギは草のカサカサという音がすれば、「心地良い風が吹いていると思うのではなく、狐が近づいてきているかもしれない」と警戒している。
人間にとっての悪いこととは病気になることで、病気の原因である細菌やウイルスに狙われているので悪いことが起こってしまう。
しかし、そうなると免疫システムが機能して細菌やウイルスをやっつけてくれる。
そして、免疫システムが細菌やウイルスを記憶してくれるので、次の侵入を許さない。
悪いことを起きにくくしてくれている。
だが、ウサギが草のカサカサという音に警戒するように、我々の免疫システムが過剰に警戒することで自己免疫疾患というものが起きてしまう。
自己免疫疾患とは自分の細胞を攻撃してしまう、いわゆるアレルギー反応のことである。
免疫システムが働くことで、悪いことが起きないようにしているのだが、免疫システムが働きにくい特別な悪いことが起きてしまう。それが「がん」である。
「がん」は自分の細胞であり、我々を狙ってきているわけではないので免疫システムが「敵」と認識しにくい。
「がん」は厄介な悪いことなのである。
と、このようにマーフィーの法則から自然淘汰の話になって免疫システム、そして「がん」へと話が飛躍していき、「あれ?なぜ悪いことは起こるのか?がテーマではなかったか?」と読み進めながら思っていました。
悪いことが起こるのは自然淘汰がそうさせるというところで、おそらく本章は結論に至っています。
僕が「この章が面白いな〜」と思ったのは、さすが進化生物学者のドーキンス博士、生物は悪いことが起きにくいように進化してきたと論じたうえで、自己免疫疾患は生物進化が「がん」に有効な武器を製作中なのではないか。という面白い考察を述べるための伏線がこの章だったというところです。
このドーキンス博士の面白い考察を確かめたいと思って、科学者を目指そうと思う人が出てきてもおかしくない締めくくりかたです。
とても素敵です。
おわりに
いかがだったでしょうか。
科学が好きな中高生や科学に興味を持ってもらいたい人にプレゼントしたくなりませんか。
もちろん、本書は大人でも十分読み応えがあってとても勉強になります。
僕はこの本を読んで、今は科学が進歩し、我々は有難いことに教育も受けているので、ある意味常識として認知していることでも、昔の人にとっては未知なものでしたので、神話的な解釈によって未知であることの恐怖と戦っていたと思うと感慨深くなりました。
ぜひ、この本の楽しさを味わって欲しいと思います。
最後に、この本はかなり大きいです。
文庫本と比べてこのサイズ感です。
先にも述べましたが、科学本の芸術作品だと思うと、とても「ふさわしい」サイズ感ではないでしょうか。
きっとこの本は宝物の一冊になると思います。